ライン川中流地域が世界遺産に指定されたのは、2002年と新しい。
父なる川ラインは、スイスのボーデン湖を出発してドイツを流れ、オランダのロッテルダムで大西洋に注ぐ。
ライン川は昔から内陸への交通の要、川の流れも結構速く、下る船は早く、上る船はゆっくりと進む。
このあたりラインガウは、ライン川に反射する太陽の光が斜面の葡萄の生育に絶好の環境となっている。
ツアーではライン川下りをして別の町にいくのが通常のルートだが、行動派シニアのためのライン中流の魅力を紹介する。
修道院は清貧、貞節、服従をモットーとする。
エーベルバッハ修道院は、敬虐な神への奉仕、開拓的な労働、無言の業、肉食禁止、禁酒、暖房なしの部屋など、厳格な禁欲主義生活信条としたシトー派修道院の修行の場で12~13世紀に造営された。
ヘッセン州に残る中世の文化遺産として、最も重要なものの一つで、半修士(職人であるが一時修道院生活をするもの)の瞑想堂、修道僧の寝室など内部も暗い、ひんやりとした空間が残っていて厳格な修道院生活を感じることができる。
修道院ではワインを作っていたが、今ではヘッセン州認定のワイン販売所が入口脇にある。
ワイン(白)の試飲もできるのがうれしい。
エーベルバッハ修道院へは、フランクフルト中央駅から列車でエルバッハまで約1時間30分、駅から車で丘に向かって15分程で到着する。
時間があれば丘の道を西に行くと、ヨハニスブルグの城がある。
城の外の丘の上のレストランでの食事は、ライン渓谷が一望でき爽快な気分が味わえる。
ライン川を下ってくると川の両側に大きな数字が見えるが、これは源流からの距離が表示されていて、リューデスハイムの町はおよそ525kmの地点にある。 リューデスハイムで有名なのは、つぐみ横丁(Drosselgasse)と呼ばれる通り。 100mほどの長さの狭いつぐみ横丁の両脇には、木組みの家のレストランや土産店が並んでいて、賑やかな音楽とソーセージの盛り合わせを食事に、明け方までビールやワインで騒いでいる。 都会のビヤホールと違った、ドイツのローカルな風情が満喫できる。
そんな喧騒とした横丁でおすすめの宿は、 リューデスハイマー シュロス。 外見は木組みだが、部屋の中は打って変わってモダンなベッドと調度品、浴室、トイレも綺麗に整備されている。
朝食はパンにおいしいジャム、果物も豊富で満足。 そしてなによりも、指揮者 カラヤンのような風貌のオーナーの歓迎と、チェックインのときに出されるリースニングワイン(白)の味がいつまでも記憶に残る。 喧騒が苦手なシニアの方には、隣のアスマンハウゼンにある古城風の、 ホテル・クローネがおすすめ。 シックで落ち着いた風情は、ライン川畔で通が泊まるホテルとして知られている。
庭のレストランは、おいしい赤ワインを飲みながらの夕食、部屋にはクラッシックのレコード盤も用意されていて、シニアカップルのためには、リューデスハイムとは違った静かな夜が心地いい。 ニーダーヴァルトへは、つぐみ横丁の橋からケーブルカーが運行しているので容易に行くことができる。 ここから船が出るので日本からフランクフルト到着後にここに宿泊してドイツの田舎町の風情を味わうことを勧めたい。.
リューデスハイムを出発すると、すぐ右手に廃城のエーレンフェルス城、川の中州に鼠の塔(元は税関用)が、またすぐ右側にはアスマンハウゼンの町。
花に飾られたホテル・クローネもその美しさが判る。
そこから左岸丘の上には、ライン川畔で美しい城の一つラインシュタイン城、続いて盗賊騎士も住んでいたライヒェンシュタイン城、盗賊の住処でもあったゾーンエック城と古城が目白押しだ。
続いて左岸には千年以上の歴史を持つ バッハラッハの町が見えてくる。
町には7つの塔が破損なく立っていて船からみる町並みの美しさが際立つ。
ここで川が右に蛇行すると、右岸前方にいよいよ ローレライの岩が見えてくる。
船が岩場に近づいていくと、有名なローレライの音楽が船上に流れる(川の水が少なくなったとき見ると、川底には岩場が露出している。
川幅も90mで曲がりくねったこの場所は、昔は船の難所であったと思う)。
ローレライの岩場は555kmで、リューデスハイムから30km下ったことになる。
岩場を過ぎると右手に人魚の像が見え、左岸のザンクト ゴアの町に着岸。
最終目的地のザンクト ゴアース ハウゼンはその対岸になる。 船が着岸するとき右の丘の上には猫城が、左手には鼠城(トゥルンベルグ城)が見える。 ローレライの岩場とライン川の美しい景観を味わう穴場は、鼠城側の丘の上にある小さな公園だ。 バッハラッハを過ぎると川の中州の島にプファルツ城、右岸には カウブの町が見えてくる。 ここからプファルツ城まで、家族経営の渡し舟がでている。 町の上方には、グーテンフェルス城がある。 カウブを過ぎると左岸に18の塔を備え、塔とワインのある町オーバーヴェーゼルが見えてくる。 そして高台には千年の歴史を誇るシェーンブルグ城塞が町を見守っている。
最後にもう少し欲張って、中世の騎士時代の姿を留めるマルクスブルグ城に行ってみよう。
ザンクト ゴアース ハウゼン駅から城のある ブラウバッハまで列車で20分で到着。
城は150mの高台にその雄姿を現す。
町から徒歩25分、城の下にある駐車場から5分で城に到着する。
城の中は騎士の間、婦人部屋、調理場、礼拝堂、望楼(地下牢獄)があり、 部屋には武器や貞操帯などが飾られている。
城を見学したらブラウバッハから2時間でフランクフルト中央駅に戻ることができる。